かつては異世界で大精霊であったこと(自覚あり)異常なまでのブラコンであること(自覚あり)以外はごく普通な女子高生である真名は事故で異世界に召喚されてしまった兄を連れ戻すため遠い昔に捨てた筈だった世界に向かう。
召喚者である少年王と共に行方不明になっていた兄。
今やなんの力もない真名は兄を救う為に王の側近である男と主従の契約を結ぶことに―――
「アナタに制限付きの忠誠を…召喚主(マスター)」
「お兄ちゃんを…返して。」
私はお兄ちゃんが大好きなのである。
今の私は――本当にただの人間なのだ。
誘拐?
カマかけてみただけです。
私の中では単純明快な因果関係の推理の帰結。
『陛下が伝説の精霊王(イブリース)を喚んだ理由』。言ってないでしょ?
「ねぇ、ハルは、アナタのお兄ちゃんは良い人ね。」
建前に塗り固められた精一杯の正論を振りかざして拒絶の意を示す。
あぁ、この人は――なんて幸薄そうな顔で本心を漏らすのだろう。
精霊(ジン)に愛された者。
「比べられて勝てるところが血統しかないから。」
全てをもう一度断ち切ってやる。
私は■■べきだろうか。
遠く離れた、けれども確かに繋がっている空の下で
――私達も、リドワーンも精霊(ジン)なんて大嫌いだよ――
今なんかスッゴい親近感が湧いた。どうでもいいけど。
「否定しなければ肯定と受け取ります。」
本当に腰をぬかすかと思った
こめかみが痛くなるほどに込めた思いはけれど何の力も生まない
「夜闇に紛れるのではない。正々堂々、日のもとで、今日、我らは正しき王をお迎えする。」
だから助かる余地がある賭ならば、恐る恐るでも命を賭けられる。
「アンタ達なんかにこの人を利用させない!!!!!」
ただ、諦観の苦笑を浮かべて穏やかに頷く。
彼女は知らない
漏れる苦笑が、その内はっきりとした笑い声に変わった
ただ、自由を奪われるためだけに鳥籠に閉じ込められ飼われる。
それは煌びやかな宝石でも何かすごい力を持ったものでもなく、まるで石ころみたいなものだろう――
「落ち着きすぎている…と?」
Love is War
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承
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番外編